初めて心療内科に足を運ぶ方というのは、必ずしも気持ちの落ち込みを訴えてこられるわけではありません。
むしろ、「朝、体を起こすことができない」「吐き気が止まらない」「頭痛が増えて困っている」といった身体症状を訴えて受診される方が意外と多いのです。
今回はその中でも、メンタル疾患の可能性まで含めた”頭痛”の原因と対応について、お伝えしていきます。
頭痛には種類に応じた治療がある
頭痛外来の受診が必要なケースもあります
元々の頭痛持ちの方であれば、ストレス要因が少なくなると、頭痛の症状も軽くなることがあります。
新たに頭痛が起こった方であれば、一般の頭痛外来に準じた対応が必要です。
2つの頭痛の種類と特徴
大きく頭痛には、ズキン・ズキンと心臓の拍動にリンクした「血管性頭痛」と、頭に鉢巻を締め付けたような「筋収縮性頭痛」があります。
拍動性の頭痛には、クモ膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎のように、命の危険性がある頭痛があります。
脳神経外科、脳神経内科のような専門医療機関でCTやMRIを撮り、診察する必要があるものもありますので、用心してください。
1)血管性頭痛
さて、「血管性頭痛」には、閃輝暗点(光の点がチカチカする)後に片側の強度な頭痛の片頭痛、なかには目の奥が連続でえぐられるように痛む群発頭痛というタイプもあります。
一般的な片頭痛には、バファリンのような普通の痛み止めは効かないことが多いです。
しかし、リプタン製剤のような特効薬がありますので、医師と相談されると良いでしょう。
2)筋収縮性頭痛
「筋収縮性頭痛」は、肩こりと同じ機序で姿勢や緊張により筋肉が収縮し、その結果、頭の表面の大後頭神経や小後頭神経とその血管が締め付けられて起こるものです。
薬としては、ミオナールのような筋弛緩薬、抗不安薬で筋弛緩作用が強いセルシンなどを使います。
セルシンは眠気が強いので、服用で継続できない方も多いです。
一般の頭痛薬が効きますが、ストレッチや整体、東洋医学の鍼灸で予防的な治療をお勧めします。
緑風会ほうゆう病院様のホームページに、「最も多い頭痛3つのタイプの鑑別診断」が記載されていましたので、ご参考にしてください。
あなたの頭痛をチェックしてみましょう
ストレスによって起こる「身体表現性障害」とは?
メンタル領域の病名に「身体表現性障害」という病名があります。
ストレスが身体症状、頭痛など脳神経症状、吐き気、下痢の消化器症状、動悸・胸痛などの循環器症状など、精密検査しても医学的原因は見つからない長期的に症状が起こり、かつストレスが強い時に症状の頻度が多くなる病態です。
つまり、原因が精神的要因でありながら、鬱や不安などの精神症状は少なく、主に身体の症状として顕われる一群の病態です。
治療は「認知行動療法」が適切
治療は症状に対しての「対症療法」でなくて、ストレスの原因を無くす、ストレスに対しての耐性を強くする認知行動療法などが適切な治療となります。
この「身体表現性障害」の中で、頭痛は最も頻度の高い症状なのです。
ストレス要因によって増減する頭痛は「身体表現性障害性頭痛」の可能もありますので、頭の片隅に置いておいてください。
もし疑った場合は、ストレスの専門医へご相談ください。
執筆者 田中 伸明
ベスリクリニック 総院長
神経内科専門医、東洋医学専門医、日本医師会認定産業医
行政やビジネスの世界での経験に基づき、人間関係の改善、仕事のパフォーマンスを発揮する方法を開発、現在子育てママのイライラや不眠に対しても「薬に頼らない」診療を行っている。『病院を科学する』『デキる看護師の思考法』など著書多数。