コラム

適応障害と診断されたらどうする?適応障害で休職する判断基準、休職するまでの流れをわかりやすく解説!

適応障害とは

適応障害とは、ライフスタイルの変化や環境からのストレスによって、生活に影響が出るほどの心身の症状がみられる状態のことです。
うつ病と違い、ストレス要因をはっきりと判断できるのが適応障害の特徴です。
そのため、ストレス要因から離れることで症状の回復が期待できますが、治療や対処なく放置していると症状が重くなり、長期に苦痛を感じる場合もあります。
再発率も高く、厚生労働省の調査では1年後の再発率は50%を超えるとも発表されています。

適応障害の要因

なににストレスを感じるか人それぞれであるように、適応障害のきっかけも人それぞれです。
家族の死別、離婚、引越し、といったプライベートな出来事のほか、転職、昇進、業務負担の増加、職場の人間関係・・・など職場のストレスがきっかけとなるケースもあります。
大きなライフイベントではなくても、慢性的なストレスにさらされていても適応障害になりえます。
本人は大きなストレスではないと気づかないふりをしている場合があり、症状が悪化してからストレス要因に気づくといった人もいます。

適応障害の主な症状

どの症状が強くあらわれるか個人差がありますが、情動面、行動面、身体面の広い範囲で症状がみられます。
下記に代表的なものを挙げています。
情動面・・・落ち込むなどの抑うつ気分、焦燥感、不安など
行動面・・・集中力が続かない、何かしようと思っても動けない、眠れないなど
身体面・・・倦怠感、肩こり、頭痛、涙が止まらないなど

このような症状が1日や2日でおさまることなく持続していたら、心療内科、精神科の受診を考慮しましょう

適応障害と診断されたら

治療方針を主治医と相談する

主治医があなたのことを正確に診察できるように、ご自身の心身の状態、ストレスを感じている状況を詳しく伝えるようにしましょう。
そして、あなたの希望を伝えることも大切です。
主治医が情報をまとめ、治療方針を検討します。
適応障害と診断されるほど苦痛を感じている状態ですから判断力も通常よりおとろえているはずです。
1人で決断せず、主治医や医療保健スタッフと相談しながら、これからどうするか考えましょう。

働き続けるか休職するかの判断基準

働きながらストレス要因に対処できるか

適応障害はストレスに対処できなくなり、心身に反応が出ている状態です。
ストレス要因に対処できる環境にいて、気力が残っているなら、働きながらの回復が見込めます。
次のような対処ができるか検討してみましょう。

環境調整

職場の人間関係、業務内容など職場環境に強いストレスを感じているケースだと、部署異動や配置転換によってストレス要因が軽減すると同時に回復が期待できます。
会社を巻き込むのに気が引けるといった人も、上司や同僚にまず相談してみましょう。

職場以外にプライベートでストレスを強く感じているケースもあります。
例えば、親の具合が悪くなり面倒を見ないといけなくなった、子どもの学校でのトラブルが絶えないなどです。
家庭環境の変化も強いストレス要因になりえます。
自分だけで対応せず誰かを頼ることで、状況が改善することがあります。
身近な人の助けを借りるだけではなく、介護サービス、福祉サービスといった公的な支援を利用するのも検討してみるとよいでしょう。

ストレス耐性を身につける

ストレス耐性を身につけ、環境に適応するのも有効な手段です。
具体的には、
・コミュニケーションスキル、社会的スキルを身につける
・カウンセリングに通い、心理的なセルフケアができるようになる
・食事、運動、睡眠など生活習慣を変える
などの方法があります。
ただし、これらのストレス耐性はすぐに身につくものではなく、継続的に取り組む時間と体力が必要です。

薬を飲む

薬を飲むのも症状を軽くし、効果的な場合があります。
例えば抑うつ気分をやわらげる薬、眠りやすくする薬など症状に合わせた薬があります。
薬は症状を軽くすることはできますが、ストレスに対処するのはあなた自身で根本解決にはなりません。
薬で体調を整えつつ、環境調整のために動いたり、ストレス耐性を身つけるといったことに取り組むとよいでしょう。

休職を判断するタイミング

働きながらストレス要因に対処する方法を紹介しましたが、無理は禁物です。次のような状態でしたら休職もふまえて主治医、職場に相談しましょう。

症状が悪化している

症状が悪化していたら休職を考慮しましょう。
さらに無理をして重症化してしまうと回復に時間がかかってしまいます。
また、うつ病、パニック症などのその他の精神疾患が合併するリスクも高くなります。

ストレスへの対処ができない

現状ではストレス要因を解決するのが困難なときも休職を検討した方がよいでしょう。
例えば、職場に環境調整を求めても会社が対応し実現するまでに時間がかかるケースがあります。
なんとか頑張って耐えようとしている間に、どんどん症状が悪化してしまいます。
ストレス要因から一旦、離れて休養をしっかり取ることが必要なときもあるのです。
休養を取って元気を取り戻してからでも、ストレスへの対処法は考えられます。
結果的に休職した方が症状が長引かずに、早く改善することがあります。

適応障害で休職するまでの流れ

会社の休職制度、就業規則の確認

慌てて休職の手続きを進めると、これでよかったのかなと後で後悔したり不安になったりします。


少しでも安心して、療養に集中できるように会社の休職制度、就業規則を確認しましょう。
休職制度は法律的な定めはなく、会社独自で設けている制度です。
会社によって、休職できる期間、休職中の給与、そもそもの休職の可否、など規則が異なります。
不明なところは会社の人事労務管理や産業保健を担当部署に確認すると、安心につながります。

病院へ受診

診断書の提出を求められる会社がほとんどです。
病院に受診し、診断書を書いてもらいましょう。
診断書には病名や休職理由、休職期間などが記載されています。

会社に休職したい旨を伝える

休職したい旨を会社へ伝え、休職の手続きを進めます。
会社によって、診断書のほかにも必要な書類がありますのでそちらの用意も行います。
業務の引継ぎ、事務的な処理に数日要することもあるので、休職の申請は早めをおすすめします。

休職中の収入

休職に入る前、心配になるのは収入です。

会社によっては、休職中も満額とはいかずとも給与が支払われる会社もあります。
給与が支払われない場合は、傷病手当金を申請します。
傷病手当金は、一般的には通常の健康保険組合の加入者は所得の3分の2が給付されます。
大企業の健康保険組合ではこれに傷病手当付加金が合わさり所得の8〜9割の給付になることもあります。

適応障害と診断されても落ち着いて対応しましょう

適応障害と診断されても慌てて行動せず、落ち着いて主治医、医療スタッフ、場合によっては職場、家族に相談しながら対応していきましょう。
ストレスに追い込まれている中では、なかなか冷静な判断ができないものです。
客観的な意見を聞いて、自分の状態を把握するよう心がけます。

休職になったら、「会社に迷惑をかけて申し訳ない」、「自分は弱い人間だ」など自分を蔑む言葉が浮かぶこともあります。
しかし、しっかり休息を取り、健康な生活を取り戻したら、「また頑張ろう」「成長の機会だ」と自分を励ませるようになります。
「焦る」気持ちと上手に付き合いながら、落ち着いて復職の準備に取りかかりましょう。

執筆者 星野 文弥

臨床心理士、公認心理師、EMDR Weekend2修了
EAP、ひきこもり支援センター、精神科病院などで臨床経験を積んだのち、ベスリ・リワーク大阪に勤務。臨床経験や心理学の専門知識を最大限にどう還元するかをモットーに、休職者のメンタルヘルス向上に努めている。