この記事は休職中や退職して求職中の方でリワークの利用を検討している方はもちろん、リワークを勧めようか考えている企業の人事や医師の方にも読んで頂きたいと思っています。
ベスリのリワークの講義内容を紹介するものですが、リワーク活動の意義にも大きく触れる内容となっています。
リワークで過ごす時間が利用者の皆さんにとって有意義なものになるように、「ビジネスリワーク活動のコンセプト」と題して、休職中およびリワーク中の過ごし方を考えて頂く講義を行っています。
ベスリのリワークでは、なぜリワークのことをビジネスリワークと呼んでいるのか?
つまり、ただ心身の健康を取り戻すだけではなく働き方を見つめ直す機会を重要視している、その理由まで利用者の皆さんにお伝えする内容となっています。
それでは詳しい内容について、ポイントをしぼって以下に紹介していきます。
ベスリのリワークでの取り組みについて、まずよく知りたいという方は、目次から「一般的なリワークとベスリのリワーク」をクリック・タップし、ジャンプしてください。
「休職とは?」を理解する

私たちは、休職期間は解雇が猶予(ゆうよ)されている期間であるとお伝えしています。
労働力を提供できなくなった際に雇用主が解雇してはならないという国による法律的な定めはありません。
休職制度は会社独自で設けられています。
会社としては、貴重な人材だから休職してでもまた我が社で働いてほしいので、解雇を猶予し、休職を認めているのです。
そのため、休職している当事者は、労働力をまた提供できる状態に戻ることが会社から求められています。
具体的にいえば、心身を健康な状態に回復させるほかに、会社に戻ったとき戦力として働ける状態になるよう、休職中は努めないといけません。
例えば、少し大げさかもしれませんが、長期間海外旅行に行きSNSに写真をアップする、夜通しオンラインゲームをして昼夜逆転の生活を続ける、このような行動は休職期間にとるものとしてふさわしいでしょうか?
気分転換をはかることは重要です。
しかし、休職している労働者の務めとしてはどうでしょうか。会社はこころよく良しと言うでしょうか。
利用者の皆さんに、先のような例も伝えながら、休職中の自分自身の行動を振り返り、考えてもらっています。
「復職とは?」も理解する


リワーク中のモチベーションを維持するためにも、どうなったら復職になるのか、知っておくことは大切です。
会社には安全配慮義務があり、従業員の健康と安全に考慮する必要があります。そのため、「復職したい」と休職している社員がいくら申し出をしても、会社がまだ健康に働き続けられる状態ではないと判断すれば、復職がかないません。
復職できるかどうか自分自身で使用者に証明していく必要があります。
会社によって復職判断のプロセスは異なりますが、概ね次のような流れが多く見受けられます。社員が主治医の復職可の診断書を職場に提出し、その後、職場の産業医、人事部門などと面談を行い、最終的には使用者が職場の状況もふまえて総合的に復職できるか判断していきます。
主治医が復職可の診断書を書いたからと言って、必ずしもすぐ復職が決まるものとは限りません。
主治医は体調面と患者の希望を踏まえて判断しています。
職場では、復職の準備が整っているか体調以外の側面からも検討されています。
社員が再発しないための対策を用意できているか、会社側が適切な業務を本人に割り当てられるか。会社によって検討事項は異なりますが、安全配慮義務に違反しないか慎重に判断しているところも多いと思います。
したがって、どのような条件で復職できるか不明な場合、会社とすり合わせするようおすすめしています。

講義では、利用者の皆さんに復職までのプロセスとリワークでの目標を整理するためのワークを実施しています。
上の画像にあるワークシートを個人でうめてもらい、グループワークでシェアしてもらっています。
他の人の状況も聞いてみることで、会社に確認しないといけないことや自分自身の課題など様々な気づきが得られます。
私もこの講義を担当したときには、このワークが皆さんの整理にとても役立ち、有意義な時間になっていることをとても実感しています。
一般的なリワークとベスリのビジネスリワーク


講義の後半からは、リワークでの具体的な活動の意義を考えて頂く内容となっています。
まず、一般的なリワークとベスリのビジネスリワークが強調しているポイントの違いを伝えています。
リワークは休職からそのまま復職するのではなく、段階をふんで復職の準備をしていくリハビリのようなものです。
一般的なリワークでは、生活リズムの安定や休養を促進する、再発しないようメンタルヘルスについて学び、対策を考えるといったプログラムがメインに行われています。
一方、ベスリのビジネスリワークでは、生活リズム、メンタルヘルスといった一般的なリワークの要素も大切にしながら、対人対応力や組織力といったビジネススキルアップにも力を入れています。
健康でないと仕事もうまくいきませんし、仕事にうまく対処できていないと健康を損ないます。
健康と仕事、両方の対策が必要です。
復職後は休職前より、健康で、さらに仕事もできている、それがビジネスリワークの目指しているところです。
具体的には、心理職や産業保健スタッフによるメンタルヘルスのサポートとビジネストレーナーによる問題解決力の向上、この2つを軸にしてリワーク活動を行っています。
再発しないためのリワーク活動


講義では、リワーク活動によってどのように再発を予防するのか説明しています。
休職すると職場環境からいったん離れることで、症状が落ち着きます。
しかし、休職した本人が変化のないまま復職してしまうと、休職したときと似たような環境や状況におちいったときの再発するリスクが高いです。
ベスリのリワークでは、個人の考え方、コミュニケーションやビジネススキルといった行動面の課題を見つめ直し対策を考え、実践できるようにトレーニングしていきます。
そうすることで、同じ職場や似たような環境に戻っても、再発なく働き続けられます。
ただし、なにがなんでも個人にばかり焦点をあてているわけではなりません。
本人以外にも、バタバタと休職者や退職者が続出するような劣悪な職場環境というのも存在します。
自分を守るための環境との関わり方にも客観的にふりかえってもらいます。
安心してリワークに取り組む

ベスリのリワークの利用を始めるタイミングで、1人1人にも説明していますが、講義の中でもあらためてリワークグランドルールの共有をしています。
リワークグランドルールとは、リワークに参加する皆さんが安心してリワーク活動に集中できるように、協力してほしい8つのルールです。
ルールには例えば、「言いたくないことは無理に言わない、言わせない」「参加者同士で切磋琢磨して成長していく場にふさわしい言動を取りましょう」といったことがあります。
ベスリのリワークでは「安心安全の場」を強く意識しています。
スタッフとだけではなく、利用者さん同士が安心して関わっていける環境づくりに配慮しています。
リワークに参加している皆さんが、同時に聞ける講義のタイミングでもリワークグランドルールを確認することで、共有認識を高めたいと思っています。
有意義なリワーク活動を意識しよう

講義、後半のワーク2では、リワークで取り組む自分自身の課題について考えてもらい、発表してもらっています。
ほかの利用者さんのいる前で発表するのは勇気のいる行動です。
そこを乗り越えて発表することによって、自分自身の気持ちも引き締まり、目標をもってリワークに取り組めるようになることを目指しています!
まとめ:「ビジネスリワーク活動のコンセプト」をなぜ伝えるか
私たちスタッフも利用者の皆さんが復職後に再発しないために講義や面談を日々行っています。
受け身でリワークに参加していても得られるものは少ないです。
「ビジネスリワーク活動のコンセプト」を伝えることで、自ら変わろうと思って行動するように励ましています。

執筆者 星野 文弥
臨床心理士、公認心理師、EMDR Weekend2修了
EAP、ひきこもり支援センター、精神科病院などで臨床経験を積んだのち、ベスリ・リワーク大阪に勤務。臨床経験や心理学の専門知識を最大限にどう還元するかをモットーに、休職者のメンタルヘルス向上に努めている。