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プログラム紹介

対人関係療法~人間関係を良好にする知恵~

コミュケーション

ベスリのリワークでは公認心理師の資格をもつスタッフが、対人関係療法の講義を担当しています。
職場の人間関係作りに役立てられるように、対人関係療法という心理療法のエッセンスを利用者の皆さんに伝えています。
この記事では講義「対人関係療法」の概要を紹介します。

対人関係療法とは

対人関係療法が開発された経緯

対人関係療法は、うつ病の発症前後の研究からスタートし、構築された心理療法です。
その研究では、うつ病と対人関係との間に大きな関係のあることがわかりました。
そこで、今までの心理療法は個人による性格や過去の体験を重視するものが多かったのですが、現在の対人関係に焦点をあてる対人関係療法が開発されたのです。

対人関係療法は、うつ病への治療効果が実証されています。
ベスリのリワークでは再発予防に対人関係療法を応用できるよう講義に取り入れています。

対人関係上の問題となる4つのテーマ

対人関係療法では、対人関係上の問題を4つのテーマに分けて整理しています。

テーマ対象となる問題
悲哀大切な人を失ったときの喪失感。
対人関係上の役割をめぐる不和重要な人との間で、期待のズレなど。
役割の変化自分の役割の変化にうまく適応できない。
対人関係の欠如新しい人間関係を作れない。あるいは維持できない。

それぞれのテーマごとに問題への取り組み方が異なります。
ベスリのリワークでは、ビジネス場面でも起こりやすい「対人関係上の役割をめぐる不和」「役割の変化」の2つのテーマにしぼって、解説しています。

講義「対人関係療法」の概要

ここからは講義の内容を少し紹介します。

対人関係上の役割をめぐる不和

対人関係療法 リワーク 
講義「対人関係療法」スライド①対人関係には相手への期待がつきもの

対人関係上の役割をめぐる不和とは、簡潔にまとめると、「自分と他者の期待のズレ」のことを言います。
この期待のズレが大きくなり、解消されない状態が長く続くと、対人関係の破綻という結果をまねきます。

対人関係で問題となる段階

対人関係療法 リワーク
講義「対人関係療法」スライド②対人関係で問題となる段階

対人関係療法では、対人関係の状態を3つの段階に分けています。
「再交渉」「行き詰まり」「離別」の3段階があります。

再交渉は、議論が平行線のまま行き違いが起きていますが、まだ話し合いのできる段階です。コミュニケーション方法を改善することで、期待のズレの解消も期待できます。

行き詰まりは、お互いの主張を飲み込んで沈黙し、議論を遠ざけている状態です。まずは、改善するためにはコミュニケーションを取るための努力が必要です。

離別は、言葉の通り、関係が破綻し離れ離れになっています。相手との関係性が重要であれば重要なほど、離別には深い喪失がともない、精神面への影響も大きくなります。

期待のズレを解消するポイント

離別や対人関係の破綻を予防するには、再交渉に挑戦し、期待のズレを解消していくことが重要です。
期待のズレを解消するポイントは、大きく2つあります。

【期待のズレを解消するポイント】
①期待を適切なものに変える
②コミュニケーションを改善する

期待を適切なものに変える

相手への期待を適切なものに変えることは、期待のズレを小さくするために有効です。
次の図にあるような問いを自分自身にしてみて、まずは持っている期待を言葉にすることを勧めています。
新しい期待を言葉にできたら、それを相手に正確に伝えてみましょう。

対人関係療法 リワーク
講義「対人関係療法」スライド③相手への期待を適せなものに変える

コミュニケーションを改善する

講義では、うまくいっていないコミュニケーションとはどういったものなのか。そして、うまく改善するためのコミュケーションの方法を伝えています。

コミュニケーション リワーク


うまくいっていないコミュニケーションの例として、「あいまいだったり、まわりくどい表現」、「確認せず一方的に納得する」、「沈黙」など紹介しています。
このようなコミュニケーションが、自分も相手にもみられたら工夫してみましょう。
上手なコミュニケーションの工夫として、「過去のことを掘り起こさず現在に焦点をあてる」「いつも等の表現を避ける」「私を主語として話す」などがあります。

特に対人関係療法で重要と考えられているのが、「過去のことを掘り起こさず現在に焦点をあてる」です。
例えば、「前にも同じようなことがあったよね」とか「あのときも実は同じことを思っていた」など言われて、腹を立てたり、うんざりした経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。
似たような事例であったとしても、そのときそのときが状況が異なります。
過去のことを持ち出すと、議論の摩擦が大きくなり、話し合いを進める気力もそがれてしまいます。

役割の変化

役割の変化も対人関係上問題となりやすい大きなテーマです。
役割の変化には、様々な対人関係の中で起こります。

例えば、家族関係でいえば、結婚すれば夫、妻としての役割、子どもができると父親、母親としての役割、親が高齢になり介護が必要になると介護者、このような役割の変化があります。
そして、キャリアの中でもこの役割の変化を経験することがあり、例えば、管理職への昇進、降格、部署異動、出向、などがあります。

このように役割の変化に適応できないと、心を病みやすくなってしまいます。

古い役割と新しい役割のプラス面とマイナス面を整理する

ではどのようにして、役割の変化に適応すればよいのでしょうか?
その方法の1つを紹介します。
役割の変化を経験したら、「古い役割と新しい役割のプラス面とマイナス面」をまず整理してみるとよいでしょう。

対人関係療法 リワーク
講義「対人関係療法」スライド④古い役割と新しい役割のプラス面とマイナス面


1.古い枠割の喪失にともなう感情を認識し、否定せず受容します。
2.それから新しい役割のポジティブな側面を見るように意識します。
3.さらに、新しい役割をはたせる感覚を持つのに、必要な知識やスキルを身に着けていきましょう。


そうすると、新しい役割を受容できるようになり、前向きに新しい対人関係を築けるようになります。

まとめ:対人関係で悩む人は多い

リワークに参加されている利用者の中にも、対人関係で悩み、ストレスを感じていたという方がたくさんいます。
対人関係療法の講義への関心も強いと、講師をする私も感じています。

しかし、いざ実践するとなると、なかなか難しい。

今までのコミュニケーションのスタイルを変えたり、役割の変化を受け入れたりするのは、言うのはたやすいが、実践のハードルは高いと感じてしまいがちです。

そこで、まず、取り組みやすいところから始めてみて、小さな変化や効果が得られたら継続してみる、さらに新しいやり方を試してみるといいでしょう。
例えば、「私」を主語にして話すや「いつも」という表現を使わない、などできそうなことから1つ選んでやってみることを勧めています。

ちょっとした工夫や努力で改善できる経験がリワークで得られたら、対人関係で悩むことが減り、職場復帰の自信へとつながると考えています。


執筆者 星野 文弥

臨床心理士、公認心理師、EMDR Weekend2修了
EAP、ひきこもり支援センター、精神科病院などで臨床経験を積んだのち、ベスリ・リワーク大阪に勤務。臨床経験や心理学の専門知識を最大限にどう還元するかをモットーに、休職者のメンタルヘルス向上に努めている。