治療開始初期、抑うつや無気力といった症状を和らげるために抗うつ薬を使うことがあります。
また他にも、不安な気分が続くようでしたら抗不安薬を、睡眠が充分にとれないようでしたら睡眠導入剤をと、困り事に合わせて様々な薬が処方されます。
薬の副作用によって起こる症状
薬は症状も緩和しますが、脳の機能を低下させることがあります。
例えば、ボーッとすることが増えた、以前より頭が働かなくなったなど。
これらはうつ症状である場合もありますが、薬の作用によって起きている場合も少なくありません。
薬のこういった作用を「業務に支障をきたす」と考え、休職中に全く薬を飲まない状態になろうとされる方がいますが、では、休職中に服薬を止めるべきなのでしょうか。
いつまで薬を飲み続けるべきか
減薬や断薬について
減薬や断薬は、薬のきめ細やかな数量調整を必要とします。
そこに要する時間は、心と身体が回復するよりもっと長い時間がかかってしまうことも少なくありません。
すると、心も身体も充実してきて、働く意欲が湧いてきても、断薬を始めてしまったばかりに復職の機会を逃してしまうことになります。
これでは何のために休職して治療をおこなってきたか、本末転倒です。
また、休職中に断薬を成功させ、その後の状態が安定していたとしても、それは休職中のストレスフリーな状況での安定に過ぎません。
そこから復職してストレスフルな生活に戻っていくと、また症状が再燃したり、下手をすれば再休職にもなったりしてしまいます。
減薬や断薬を行うタイミング
減薬や断薬の基本は、「状況が安定しているときに取り組む」です。
状況(取り巻く環境)が不安定なときに減薬によって不安定な状態になってしまうと、何の影響で不安定になったのか分からなくなってしまいます。
復職に向けて会社とやりとりしている最中に減薬も進めようとすると、不安に襲われたときにそれが復帰への不安なのか、薬を減らしたから生じた不安なのか分かりません。
不安定になる可能性のある減薬や断薬は、復職後、状況が安定してきてからじっくりと腰を据えて行うことが望ましいです。
もちろん、薬の数量が少なかったり異動などで環境調整が入ったりする場合にはその限りではありませんので、自分一人で治療計画を立てず、早いうちに主治医と減薬についての考えをすり合わせておくといいでしょう。
執筆者 関本 文博
臨床心理士、公認心理師
精神科・心療内科クリニックにて就労者や休職者の不安治療に従事。認知行動療法や応用行動分析など最先端の心理療法を駆使し、子育てから大人の発達障害まで幅広く社会適応の改善に取り組んでいる。