コラム

ストレスによって下痢と便秘が繰り返すメカニズムと対策

ストレスがかかると、下痢や便秘を繰り返すことがあります。
この現象には「自律神経」が関与しています。

下痢と便秘が繰り返す原因

胃腸の働きをコントロールする「自律神経」

自律神経とは、読んで字の如く「自律的に働く神経」です。
神経を使って手足を動かすときは、大脳から神経を介して指示が出ていますが、自律神経は大脳からの指示を必要とせず、自律的に活動しています。
心臓の拍動や胃腸の働きは、自律神経がコントロールしています。

交感神経と副交感神経

自律神経は「交感神経」と「副交感神経」から成っており、さらに副交感神経は「横隔膜より上を司る神経(疑核)」と「横隔膜より下を司る神経(迷走神経背側運動核)」の2つから成り立っています。
このうち、疑核は安心してリラックスしているときに活発に働きます。

ストレスを感じたときの身体の反応

脅威的なほどのストレスを感じたとき、身体は「闘争」か「逃走」かの二択を迫られます。

「闘争」を選ぶと、自律神経は交感神経が活発に働き、車で言うところのアクセル全開になってストレスを乗り越えようとします。
一方、「逃走」を選ぶと、自律神経は迷走神経背側運動核を活性化させ、思いきり急ブレーキをかけたような状態にしてストレスが過ぎ去るのをやり過ごそうとします。

便秘と下痢を繰り返す「自律神経」のメカニズム

実は交感神経優位のとき、横隔膜より下の活動は一時的にストップします。
消化や排泄にかけるエネルギーも、闘争に注ぎ込もうとするからです。

反対に、迷走神経背側運動核優位のときには、横隔膜より下の活動は過剰に働きます。
ストレスをやり過ごす間は食物が摂れなくなるため、少しでも多く胃腸の中の物からエネルギーを得る必要があるからです。

このように、ストレスがかかると人の腹部にある内臓は、過活動になったり活動を停止したりを繰り返します

笑顔が安心感につながる

休職してからも下痢と便秘を繰り返してしまう方は、安心安全が足りずリラックスできていない可能性がありますので、そう感じられるような環境に周囲を整えるようにしましょう。

また、笑顔を増やし、笑えるようなものに多く触れるようにするのも効果的です。
人の身体は「安心する→安心したときの行動を取る」だけでなく、「安心したときの行動を取る→安心する」という機能も備わっていますので、安心しているときの人間が取る最も一般的な行動、つまり笑うことで安心感を自ら発生させることができるのです。

執筆者 関本 文博

臨床心理士、公認心理師
精神科・心療内科クリニックにて就労者や休職者の不安治療に従事。認知行動療法や応用行動分析など最先端の心理療法を駆使し、子育てから大人の発達障害まで幅広く社会適応の改善に取り組んでいる。